こんにちは。
飯田橋のカウンセリングルーム、サードプレイスのナカヤマです。
私は2012年のクリスマス前、ペンシルバニア大学のCTSA(Center for the Treatment and Study for Anxiety)というところで約3週間、PE(持続エクスポージャー療法)というトラウマ焦点化した心理療法について学んでいました。
CTSAにはエドナ・フォア先生というPEを開発したエライ先生がいるのです。
どれくらいエライかというと、CTSAはもちろんアメリカにある施設なので、そこに勤めるサイコロジストたちは(アメリカ風に)フレンドリーな感じで「サンディー」や「ディビット」とお互いをファーストネームで呼び合っている中、フォア先生だけは「ドクターフォア」と呼ばれているくらいの、別格な扱いなくらいエライのです。
フォア先生は見た目もなんというか、インパクトがあります。GAPなんかでは絶対売っていないような、ビビッドなカラーのレースの装飾のついた、ツヤのある黒のふんわりしたロングドレスを着ています。
そうしてダイエットのためと称してトマトの地中海風サラダなんかを食べながら講義したりしています。
大体講義をするといっても本当に重要なポイントだけなのですが、フォア先生が教室に入ってきて、口を開くと、先生の周りに引力が集まるような感じになるのです。それに、フォア先生はイスラエル出身なので、その独特な訛りのある英語でゆっくりと話す様子もなんだか特別な雰囲気です。
PEではトラウマの話を何度も話す、という治療手順があります。
この治療手順が患者さんの力を引き出す本当に大きな効果があるのですが、一方では何度もトラウマの話をさせるのはかわいそうじゃないか、という意見も多くあります。
この日はこのトラウマの話を何度も話す、という(物議をかもしがちな)治療手順についてフォア先生の講義がありました。
フォア先生はいつものように黒が基調の、ところどころがタマムシ色に光っているボリュームのあるロングドレスを着て現れました。
そして、おもむろに口を開くと、「トラウマ記憶とは頭の中にある怖い映画のようなものだ」と厳かにおっしゃいました。
フォア先生は言います。「では、お前たちに聞くが、怖い映画をみるとどんな気持ちになるかい?」
参加者は答えます。「怖い気持ちになります」
フォア先生「そうだね。では、その怖い映画を100回みるとどんな気持ちになるかい?」
参加者「・・・・慣れます」
フォア先生「そう、慣れて、退屈にさえなるかもしれないね」
この短いやりとりだけで参加者一同は、納得、の雰囲気に包まれました。フォア先生にかかると、トラウマを何回も話すことに関わる例の物議が一瞬で終わってしまったのです。
実際のPEでは100回も話したりはしませんし、もちろんやみくもに話させるということもしません。
でもトラウマ記憶は怖い映画と似ているって知っていると少しは役に立つかなと思いました。
ではまた!