こんにちは。
飯田橋のカウンセリングオフィス、サードプレイスのナカヤマです。
子ども時代の逆境的な環境(虐待やネグレクト、DVにさらされることなどです)を経験し、オトナになってから様々な「生きづらさ」を感じる、という現象に対しては、ある概念が有名なのではないでしょうか。
アダルト・チルドレン(AC)です。
元アメリカ大統領のビル・クリントンが自らがアダルト・チルドレンであるとカミングアウトしたこと(彼の場合は義父がアルコール症で、DVもあったそうです)はよく知られた話です。
その後大統領の職にありながら当時ホワイトハウスの実習生だったモニカ・ルインスキーと不倫があったことで、スキャンダルになりましたが、ビル(と友だちのように呼んでみます)からするとあんなすべてがダイナシになるかもしれないことを自分がしでかしてしまったのは、大人になっても衝動や感情のコントロールが上手にできないという問題があったからでしょう。
個人的にはヒラリー・クリントン(ビルの妻)が回想録の中でルインスキー事件に対して「ビルの首を締めてやりたいと思った」と述べたのが、なんというか、印象的でした。
ちょっと本題からそれましたが、アダルト・チルドレンと複雑性PTSDの違いについて聞かれることがあります。
子どもの頃の虐待やネグレクトの体験、という前提条件のようなものが重なるからでしょう。
(ここでまた本題からそれますが、私自身はアダルト・チルドレンまたはACの言葉や概念は使いません。理由は、ただ何となく自分の中でしっくりきていないことと、アダルト・チルドレンを最初に日本の紹介した斉藤学先生とはなんの縁もないからです)
複雑性PTSDは、児童虐待や強制収容所、DVなどの長期、反復型のトラウマ体験により引き起こされる症候群です。その診断にはまず、PTSDの診断を満たすことが必要です。そのうえで、感情調整の困難、否定的な自己概念、対人関係の困難の3つのクラスターの中の症状に関連した機能障害がみられます。
ひらたくいうと、複雑性PTSD=PTSD+3つの症状に困っている状態、であり、複雑性PTSDとPTSDは切り離せない関係になっています。
ACは診断名ではないので、ここまで厳密に症状整理されていません。それでも実際には、AC、という自己認識を持っている人の中にはPTSDの症状がある人は多く含まれていると思いますし、複雑性PTSDに該当する人もいるでしょう。
複雑性PTSDは(ACと違って)症状の一つ一つが明確になったことで(確定的因子分析などが用いられたそうです。と言っている私もよくわかっていませんが)、それに対応する治療法の開発が進み、エビデンスが積みあがっているところが有用だと思われます。
人は自分の生きづらさの正体が命名されると安心できるものです。
ACはその点において大きな役割を果たしました。その概念に集まって自分の体験を話したり共有することで、苦痛を感じているのは自分だけでないと感じることができたし、自分は人間として決して変ではないと思えたのです。
複雑性PTSDも同様にその役割を担うことができます。
更に良い知らせは、それに加えてエビデンスのある心理療法が用意されていることです。それは私たちに希望を与えてくれます。
ではまた。
●複雑性PTSDについてもう少し詳しく☞【複雑性PTSD】診断がつく、ということは治療法があるということです
●毒になる親☞【複雑性PTSD】相手に対する怒りを持つことを許してみる
●インナーチャイルド☞【インナーチャイルド】の育て方、または感情調整の秘訣