こんにちは。
飯田橋のカウンセリングオフィス、サードプレイスのナカヤマミチです。
CARE(Child Adult Relationship Enhancement)という子育てプログラムはシンシナティ子ども病院のトラウマ・トリートメント・トレーニングセンターというところで開発されました。CAREの産みの親であるバーバラ・ボート先生はその開発にあたって、当時シンシナティ大学医学部小児科・精神科の教授だったフランク・W・パトナム先生の存在がとても大きい役割を果たしたと語っています。
パトナム先生は解離の世界的権威であり、その著書『解離―若年期における病理と治療』の中で、解離とは何かという包括的な解説から、病因としての児童虐待と性虐待について明らかにし、多重人格性障害(今は解離性同一性障害といわれます)の診断やその治療までをまとめています。
でも、バーバラ先生がいうには、なによりもパトナム先生のあたたかいお人柄が、彼女が仕事をしていく上で大きな支えや励ましになったそうです。
そしてバーバラ先生は、パトナム先生がどうやってご自分のティーンエイジャーの子どもとCAREスキルを使ってやりとりをしたのか、あるエピソードを教えてくれました。
パトナム先生は自分の息子が庭のポストの前に車を駐車することにとても困っていました。ポストの前が車に占領されてしまうので、毎朝新聞を取り出すのに苦労していたのです。
そこで「車を庭の物置の前に停めてくれるかい」と息子に頼みました。それを聞いた息子はこころよく「OK」と返事をしました。
でもティーンエイジャーの子どもがいる人だったり、自分がティーンエイジャーだった頃のことを覚えている人はわかると思いますが、思春期の子どもの「OK」は大抵、そんなに大した意味(少なくともOK:承諾、の意味)は持っていなかったり、上の空での合いの手みたいなものだったりするものです。
世界的な解離の権威のパトナム先生の息子だって例外ではありませんでした。「OK」と返事をしたのにもかかわらず、相変わらずポストの前に駐車をしていました。多くの親ならキレるところかもしれませんがパトナム先生はなにも言いませんでした。
なにも言わずに2週間たち、ある雨の降った翌日のこと、たまたまいつもの息子の駐車場所であるポストの前は盛大にぬかるんでいました。自分の車に泥はねをつけたくなかった息子はいつもよりちょっと遠いところ、まさに物置の前、に車を止めました。
パトナム先生はそれに気が付いて「車を物置の前においてくれてありがとう。おかげでポストから新聞がとりやすくなったよ」と息子をほめました。
それから、何が起きたかというと、ティーンエイジャーの息子は二度とポストの前に車を停めることのないように気を付けるようになり、パトナム先生はといえば、毎朝スムーズにポストから新聞をだせるようになった、ということです。
親であったらこんなふうに子どもに関わりたいと思うし、子どもだったらこんなふうに親に関わってほしいと願います。
パトナム先生はまさに子どものよい行動に目を留めて、それを認める(褒める)ことで、子どもの行動を変えることができました。
私たちは子どもを見て、つい直 してほしいと思う行動に目を留めがちです。そしてつい、「何度、ポストの前に駐車しないように言えばいいんだ!」と腹を立てがちです。そして肝心の子どもの行動が変わることはほとんどありません。
本当にちょっとの視点の違いなんですけどね。。。。
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