こんにちは。

飯田橋のカウンセリングオフィス、サードプレイスのナカヤマです。

心理学を学ぶ多くの人々と同様、私も物語やイメージ、たとえ話は大好きです。

困難な境遇にありながらも、自身の才能でもって権力と愛を手に入れる話は「シンデレラストーリー」だし、あの手この手を繰り出してサービスを売りつけようとする営業マンに対しては「ドラえもんみたいですね」とツッコミを入れたりします。

そんな中、不慣れなイメージやストーリーに馴染むには少々時間が必要です。

「インナーチャイルド」がそれでした。

もう10年以上前になりますが、ある患者さんが、ワークショップで自分のインナーチャイルドを見つけた、と話してくれた時のことです。

インナーチャイルドについて不勉強だった私は質問しました。

「それって何ですか?」

彼女は「子どもの頃に虐待されたり、適切な世話を受けなかったため、子どもらしく生きることができなかった。インナーチャイルドとは、その頃の私が喪失したと思っていた小さな子どものイメージです」と教えてくれました。そして続けて言いました「ずっと一人ぼっちで放っておかれたのを、この間やっと見つけてあげられたのです」。彼女は自分のインナーチャイルドが一人ぼっちで泣いていたので、抱きしめてあげたそうです。

子ども時代の逆境的な環境では、加害者の顔色を伺ったり、場の雰囲気を壊さないように適切な行動をすることに腐心するあまり、子どもは自分自身の感じ方や気持ちを二の次にしたり、抑圧することで生き延びていきます。そういう子どもは大人になってから、しばしば身体と心がつながっている感じが持てなかったり、生き生きとした感情が「なくなってしまった」ように感じたりするものです。彼女の話を聞くうちに、どうやらインナーチャイルドとは、失われた「感情体験」と非常に近いものだと理解しました。

彼女のインナーチャイルドは長いあいだ一人ぼっちでいたので「孤独感」や「寂しさ」を感じており、それに気がついて優しく抱きしめてあげることが癒しには必要なことなのです。

でもここで、私は一つ疑問を感じて尋ねました「インナーチャイルドを抱きしめてあげたら次はどうすればいいのでしょうか」。彼女はちょっと困った顔をして「それから後は、瞑想とかをするみたいですがそんなに詳しくはわからないのです。ワークショップのゴールはインナーチャイルドを発見して抱きしめる、までだったのですから」と言います。それを聞いて私は俄然ハリキって、じゃあインナーチャイルをどうやってケアしたらいいのか保育のプロに教えてもらってくるね、と彼女に告げてモリ先生のもとに向かいました。

モリ先生は保育の素晴らしい先生で、関わった全ての子どものブロッコリー嫌いを治してきた(くらいの)卓越したスキルの持ち主です。今こそモリ先生の子育ての技が求められていると言っても過言ではありません。

 

モリ先生、長い間放っておかれて泣いている子はどのように扱ってあげたらいいのでしょうか。

モリ先生「もう大丈夫だよって優しく抱きしめてあげて、背中を優しくさすってあげたりトントンしてあげるといいのではないでしょうか。」

なるほど、初動は大丈夫なようです。でもモリ先生、ここからが問題なのです。抱きしめてから、次にどうすればいいかわからないのです。

モリ先生「泣きやむまではトントンするのがいいですね。その子はどのくらい放っておかれたんですか?」

ええと、場合にもよりますけど、10年以上はゆうに放っておかれた子だと思いますけど。

モリ先生「それじゃあ、相当ぎゃん泣きになることを覚悟しておいた方がいいですね。」

ぎゃん泣き・・・。それは大変そうですね。そんなに泣くものでしょうか。

モリ先生「今まで心細かったところを抱きしめてあげるのだから、ホッとして泣くっていうのもあるけど、今までのぶんの溜まった怒りが癇癪になって出てきたり、それこそ、のけぞって泣く子もいるでしょうね。」

のけぞって泣くなんて、そんなことしたらちゃんと抱っこできないじゃないですか。

モリ先生「そういう子もいますよ。よしよしされてしくしく泣いている子なんてかわいいものです。癇癪を起したり、床を転げまわったりして手がつけられないようになる子もいるし、噛みついてくる子もいます。」

噛みつかれるなんて、痛そうですね。

モリ先生「ええ、あれは本当に痛いです。ついこちらもキレそうになったりして。」

モリ先生でもキレることってあるんですか。

モリ先生「人間だもの。あら、相田みつをみたいなこといっちゃったわね。あはははは。」

あはははは。じゃあ、先生はキレそうになりながらどうしてらっしゃるんですか。

モリ先生「その子が落ち着くまでとにかく待って、少し落ち着いてきたなっていうときに、タイミングを見計らってお白湯を飲ませたり、噛みごたえがあって身体に良いお腹にたまるものを食べさせたりします。」「それから静かで心地良いところで休ませたり、お昼寝させたりするんです。」

なんか色々してあげることがあって大変そうです。

モリ先生「そうですね、気持ちをなだめる、ということに関しては、本当に向き合って、心してとりかかる必要がありますね。でもいつかは気持ちはほぐれてくるものですよ、それを信じて待つことです。」

 

私はモリ先生にお礼をいって戻り、インナーチャイルドを抱えて待っていた彼女に一部始終を話しました。そして「どうやらずいぶん手間がかかるようです。でも腹をくくって関わることが癒しを生むようですよ。」と伝えました。

彼女はしばらく考えていましたが、「今はインナーチャイルドを見つけただけで充分だと思ってます」「それに、この子が癇癪を起したりしても、なだめたりする時間が私にはありません。仕事も忙しいし、家族の問題でも今てんやわんやなのです」「もう少し落ち着いたら本格的にやれるかもしれません」と言ってそそくさと帰ってしまいました。

あとに一人残されたその時の私のイメージはこのような感情でした。

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ではまた!

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投稿: 飯田橋 サードプレイス

東京千代田区飯田橋にあるカウンセリングルーム、サードプレイスのブログです。

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