こんにちは。

飯田橋のカウンセリングオフィス、サードプレイスのナカヤマです。

今日のハナシはどこから話そうか、でもどこから話しても同じところにもどってきそうなので、どこから話してもいい話となるもかもしれません。それに、このハナシに出てくる人々の話はフィクションでもあります。

 

というのも、DVのことを考えていたからです。

DVとはDomestic Violence(配偶者間暴力)のことで、親密なパートナー関係にある人との間で起こる暴力です。DVは、身体的暴力だけではなく、いわゆるモラハラといった心理的な暴力や、性的な暴力などを含んだ全ての人権侵害を指します。内閣府は平成11年度から男女間における暴力の調査を行っていて、平成29年度も全国20歳以上の男女5000人にその実態を尋ねています。それによると、女性の3人に1人、男性の5人に1人は配偶者から被害を受けたことがあり、そのうち女性の約7人に1人は命の危険を感じた経験があることなどが明らかになっています。

「女性の3人に1人がDV被害者」というのは、変な言い方かもしれませんが、世界的なスタンダードなのです。つまり、日本でも、アメリカでも、ヨーロッパでも、アジアでも、アフリカでも「3人に1人」はDVの被害者であるということが数々の調査で報告されています。

 

ところで、PE(持続エクスポージャー法)というトラウマ焦点化した心理療法があります。

PEでは、一つのトラウマ体験に絞って心理療法を行うことで、最良の治療効果をあげることができるといわれています。つまり、DVなどの長期に何度も繰り返されるような、複雑なトラウマを扱うのには適していない、という指摘も多くされてきました。

 

私のはじめてのPEに協力してくれた患者さんは、ある通り魔事件の被害にあってからPTSDに悩んでいた方でした。事件は恐ろしいものでしたが、幸い彼女は軽傷で済み、また既にその傷も回復し、安定した生活を送っていました。初学者の頃のPEには、このような「シンプルトラウマ」からのPTSDが、先の事情もあって、(言葉は悪いですが)うってつけなのです。

治療は順調に進むはずでしたが、その途中で、彼女は通り魔事件とは別の他のトラウマ記憶に悩まされることになりました。彼女は子どもの頃に、父親から母親へのDVを目撃していたのです。彼女には母親が死んでしまうかもしれないという強い恐怖と無力感がありました。また、通り魔事件の加害者が父親だったのではないか、という疑いがどうしてもぬぐえないのでした(実際、父親は既に鬼籍に入っており、彼女自身が喪主を務めたので、彼女はその疑いが不合理であるということは十分承知していたにもかかわらず、です)。

 

PTSDには、しばしば、子ども時代のトラウマ的記憶からの感情や考えが深く絡みついているものがあります。ある一つのトラウマ的出来事は、以前の人生の記憶を呼びおこすきっかけに過ぎないこともあるのです。

 

PEの2ケース目は交通事故の被害にあった方でした。彼は自転車に乗っていたときに、車に接触されて転倒したのですが、運転していた加害者はそのまま走り去っていってしまいました。いわゆるひき逃げ事件です。彼は自力で病院にたどり着き、治療を求めました。怪我は回復し、仕事にも復帰できましたが、夜になると夢に繰り返し事故のシーンが出てきて、それが彼を苦しめていました。

夢は実際の交通事故よりも凄惨な内容で、事故に遭って、あとに残された彼は手足など身体の一部が損傷したり、なくなるといった恐ろしい内容でした。夢の中で彼は血を流して死の恐怖におののいている、といった状況を繰り返し体験していたのです。

そんな中ではじめたPEでしたが、やはり(というか、もはやなんといえばいいのか)彼の子どもの頃のある日、激しいDVの結果母親が突然家出をして彼の前からいなくなってしまった、という記憶が明らかになったのです。子どもにとってこれは大変に大きな喪失体験であり(母親はその2週間後に帰ってきましたが、当時子どもだった彼にとって、母親がいつか帰ってくるということは知る由もありませんでした)、そのために強く感情にフタがされた状態になってしまいました。彼を悩ませていた夢は、事故のシーンに、いわばその舞台設定を借りて、彼の喪失の感情を再演していたのです。

 

DVは時代や国境を越えてあまねく広がっています。私たちはそれを避けては通れないし、またそれがある限り、トラウマは複雑になります。一見、一つのトラウマ的な記憶に悩まされているようにみえても、その背景にはいろんな形でDVが影響していることは少なくありません。DVはPTSDと複雑性PTSDを隔てる境をなくすものです。

 

私がこんなにムキになっている(今日のブログの文字数の多さときたら!)のも、一つは私が女性だからということに他なりません。仮に子ども時代にDVの家庭ではなかった、というラッキーな境遇を経てオトナになっても、そのあと自分がDVの被害者になる確率が3人に1人とは、これってあまりにもひどすぎる状況じゃあないでしょうか・・・・。

 

●「PTSDと複雑性PTSDに違いなどない」と言われた☞【複雑性PTSD】究極的な回復の手段

●PEについて☞【PE】そのネーミングセンスがいかがなものか問題

 

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ではまた!

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投稿: 飯田橋 サードプレイス

東京千代田区飯田橋にあるカウンセリングルーム、サードプレイスのブログです。

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