ご無沙汰していました。
飯田橋のカウンセリングオフィス、サードプレイスのナカヤマです。
認知行動療法の考え方は、自己啓発セミナーなど(心理療法の世界に比べるとキラキラ感が多めの)の世界でも普及しています。
セミナーなどで、よくテーマになるのは
「ポジティブな物の見方をしよう」
ということで、例えばコップに半分程度入った水に対して「まだ半分もある」と考えるのと「もう半分しかない」と考えるのでは、人生の成功具合とか、幸せの引き寄せ具合は違うっていうやつです(そしてこの場合は「まだ半分もある♡」って考えるのが正解ってことらしい)。
でも実は、「まだ半分もある」とスムーズに信じられるのは、元からそう思えている人か暗示にかかりやすい人で、多くの人にとってはなかなかに難しいことなのです。
「そもそも、私はこれまでの人生の全ての事象において、コップに半分しかないっていう風に考えるタイプの人間です」って変に自分の歴史をさかのぼって反省したり、「いくら自分に言い聞かせてもポジティブに考えられるようにならない!」と頭をかきむしる、変に真面目な人もいます。
そこで私は、この手の「ポジティブな見方をしよう」という、もうほとんど呪いに近いこの考え方についての対策を求めて、エライ先生からの助言を仰ぐことにしました。
先生はこの業界(心理療法)のエキスパートを育てている、いわばエキスパート中のエキスパートです。この先生を前にすると私は緊張のあまり妙にヘコへコして、正直のところ面会するのは気がすすまないのですが、背に腹は代えられません。
コップに水は半分しかないって考えるタイプの患者さんに対し、どのように認知を再構成していけばいいのでしょうか(質問の仕方も自ずとエキスパート風になります)。
先生はこのように答えました。
「そもそも、コップに水が半分しか入っていないのが問題なのだから、コンビニの近くに引越せばよい」。
え、そういう問題ではなくて。
「では、なにが問題なのかね」。
先生とのやり取りは、ものの5分で終了してしまいました。
そうして、私は「エライ先生に5分も時間を割いてもらった♡」と殊勝に喜ぶかわりに「あのジジィ、5分しかくれなかった!」と憤然として帰ってきたわけです。
腹の虫が収まらないので、食べログのアプリで検索したカフェに向かいました。そのカフェで「スペシャル・パンケーキ、エシレバター付き」を食べました。そして、その足でスパに行き、岩盤浴をしました。足つぼマッサージをうけました。そうしてお湯につかっている間に、だんだんと落ち着いてきて、ゆったりした気分になってきました。
お湯につかりながら思いついたのは、コップに水が半分しか入っていないと、不安を感じて落ち着かないよなぁ、ということでした。
すなわち、私たちの苦悩の元は、考え方ではなくて、感情にあるということです。
ネガティブな気持ちになっている時は、考え方を変えようと躍起になるよりも、その時の感情を手当てしてあげることが肝要なのではないでしょうか。コップの水が少なくて不安になっている時は、自分の気持ちが安心に近づけるようにケアしてあげることが良いのです。私がまさに今、怒りという自分の感情をケアしてるように、です。
そう考えると、コンビニの近くに引越すのはあながち間違いでもありません。
エライ先生の態度はちょっとばかし気に入らなかったけど、全くのムダな5分ではなかった、許してやろう、そう考えて、湯上りの身体に心地良い夜風を受けながら帰りました。
こちらもどうぞ
●ノリコさんの気持ちの収め方☞【感情調整】クリエイティブな気持ちの収め方
●日常にある認知行動療法☞これもまた【認知行動療法】
●怒りの気持ちの収め方☞【感情調整】怒りそのものなような、そのようにみえるような
ではまた!