こんにちは。
飯田橋にあるカウンセリング・オフィス、サードプレイスのナカヤマです。
今日はハルさんの話しをしようと思います。
ハルさんがDVの夫の元をやっとの思いで逃れ、実家にたどり着いた日のことです。
実家で迎えた母親はハルさんの顔にできたあざを見てショックを受けました。怒りをあらわにして「こんなことは間違っている」と言い、さらには「私が今から乗り込んでいって、ヤツに同じ目を合わせてやる」と飛び出していきそうになったので、ハルさんは慌てて母親を押しとどめ、怒りをなだめるのに必死になりました。
ようやく母親を落ち着かせたハルさんが向かったのは病院でした。事情を聞いた医師は「あまり考えないことです。考えすぎるのはよくないことですから」と言って、眠れる薬、不安を抑える薬を処方をしてくれました。
次に、薬を抱えたハルさんは心理学者のところを訪ねました。心理学者はハルさんの生育歴や既往歴などについて質問し、夫の両親にもDVがあったことを知ると、暴力の連鎖、について説明しました。
ハルさんは疲れた体といろんな知識で一杯になった頭を抱えながら家路につきました。
そして、歩きながらひとりごちました。
「誰も私の話を聞いてくれなかったな」。
ハルさんのお話はこれでおしまいです。
実は、このお話はハルさんのココロの内部で起こっていたことでした。
怒りが収まらない親も、考えさせないようにする医者も、理屈で説明しようとする心理学者も、みんなハルさんの中にいる人たちなのでした。
当事者の心のケアは、出来事の最中に当事者自身が感じたことや考えたこと、何を体験したのかを理解し、寄り添うことが出発点になります。
でもしばしば、自分の声に耳を傾けるということは、とても難しく感じられるものです。怒りや恐れの感情、こんなことは世の中にはよくあることだ、みたいな評論家のような考えが、自分の本当の体験に向き合うことへの障壁となっているからです。
しかし、当事者である自分がどう感じてるのかわからないで、どうやって自分を助けられるというのでしょうか。
勇気を持って自分の声を聞いてほしいと思います。
そばにいる私も、その声に耳を傾けようと思います。
身じろぎもせず。
ではまた!