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東京千代田区飯田橋にあるカウンセリングルーム、サードプレイスのブログです。

サードプレイストラウマ

【ご挨拶】2020年1月

2020年になりました。

飯田橋にあるカウンセリングオフィス、サードプレイスのナカヤマです。

 

ショートカットにしていた髪が、年末からお正月にかけてずいぶんと伸びてボブのようになりました。

そして今朝、鏡に映った自分をみて、ふと、

 

 

 

『ノーカントリー』に出てくる悪役の男優に似ているな

ノーカントリー

 

とちょっと愉快な気持ちになって、一人フフフと、声に出して笑ってしまいました。

 

 

そして思いだしたのが、小学校2年生のときのことです。

当時流行っていたマッシュルームカットにされて学校に行った朝、ココロナイ男子から「キノッピー(知らない人はググってみてください。悪役のキノコです)」とか「キノコ」とからかわれて、私は心底傷ついたのでした。

 

今朝の私は『ノーカントリー』でも笑えるのに、子どものころの私は「キノッピー」レベルで、もう心が折れていました。そして、鏡に映る自分のマッシュルーム型のヘアスタイルを呪ったものでした。

この変化は、決して私の成長(加齢)だけによって起きたことではありません。なぜなら、人の心理ってものは、その単体のみで成り立つものではなく、いつもその人を取り巻く環境が大きく関わっているものだからです。

 

 

すなわち、「キノッピー」と呼ばれたときの私はまだ子どもで、自分で髪型を変えられるすべも、お金も持っていなかった、ということがあります。手でひっぱったって髪は少しも伸びてはくれませんでした。それに、そのマッシュルームカットは両親の意向であって、私個人としては、髪の毛を肩まで伸ばしてゴムで結わえてみたいとひそかに願っていたのです。

 

そんな状況から生じる私の心情に近いものは、「無力感」で、これがつまり、すべてのトラウマであったり、苦痛な記憶の核にあるものです。もし、この記憶がきちんと消化されないと、私は大人になっても「キノッピー」に思い悩むことになったでしょう。

 

ある事象に対して私たちが傷つくのは、周りの環境が私たちに味方してくれるものではなかったり、私たちが子どもだったりするが故に無力感を持つためで、私たちの個人的な資質(例えば性格や知能とか)がそれに及ぼす影響は比較的小さいものだと思っています。

 

 

そんなことを踏まえつつも、私の仕事は心理療法なので、今年も、みなさんの感情について、考えについて、そして身体の感覚について、何遍も尋ねるかもしれませんが、みなさんを取り巻く環境が実に大事ってことは、マッシュルームカットで身に染みていますよってことをお伝えして、新年のご挨拶にかえさせていただきたいと思います。

 

本年もどうぞよろしくお願いします。

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ピックアップ!複雑性PTSDUncategorized

【2019年最も読まれた記事】第1位【複雑性PTSD】診断がつく、ということは治療法があるということです

こんばんは。こんな時間にすいません。

飯田橋にあるカウンセリングオフィス、サードプレイスのナカヤマです。

金曜日の更新が間に合わず、今は土曜日、あと1時間で日曜日になるところです。

 

2019年で一番読まれた記事は、複雑性PTSDについて最初に書いた記事でした。

【複雑性PTSD】診断がつく、ということは治療法があるということです

実際、サードプレイスの臨床の殆どは複雑性PTSDが主訴か、もしくは避けては通れない大事な概念となっています。

 

今年は本当に忙しい一年になりました。

CBT-E(摂食障害のための認知行動療法)やNET(ナラティブエクスポージャーセラピー)がやってきました。

摂食障害学会で症例発表をし、NETはスーパーバイズを受けながら臨床がはじまっています。

刑務所でグループセラピーがはじまり、そのマニュアルの完成も間近となりました。

何よりも、個人的にはずっと塩漬けにしていた博士論文を提出することができました。

安堵しています。

というよりも真っ白に燃え尽きています。

 

年末年始はお休みして、来年の臨床の準備をしようと思っています。

来年はもっと丁寧にブログの記事とも向き合いたいと思っています。

そして、来年早々に来る女子高生たちのために、トルネード振り向きの練習をしながらお正月を過ごそうと思ってます。

 

 

 

実際お会いしているみなさま、これからお会いするかもしれないみなさま、これからもお会いしないかもしれないけどうっすらと繋がっているみなさま、みなさまにココロより感謝し、ご多幸をお祈りしています。

みなさまにとって心安らかなお正月になりますように!

 

サードプレイス

ピックアップ!複雑性PTSDSTAIR/NST

【2019年最も読まれた記事】第2位 STAIR誕生!

こんにちは。

飯田橋のカウンセリングオフィス、サードプレイスのナカヤマです。

 

2019年2番目によく読まれた記事は

【複雑性PTSD】STAIR誕生!【感情調整と対人関係のためのスキルトレーニング】

でした。

 

STAIRがフツーの認知行動療法と違うのは、いつでもどこかしら、私たちの考え方や行動様式がトラウマ的な過去とつながっていると意識されているところです。

 

特にグループでSTAIRについて学ぶとき、グループの参加者が直観的にそのことを理解できるようにたとえ話をつかうことが多々あります。

例えば、こんな話です。

 

子どもの頃に両親に愛されたという感覚がないままに育った人がいるとします。その子どもは「自分は愛されるに値しない人間だ」と思って育つのです。

その子どもも青年になって、ある女性に心を寄せるようになります。一大決心をしてその女性をデートに誘うと、彼女は応じてくれました。青年は天にも昇るような気持ちになりますが、一方でそれが信じられないような気持ちでもいます。

さてデートの当日、二人で散歩をしているときに青年の頭に「どうせ自分なんか彼女に好かれるわけがない」という考えが浮かびます。そうすると青年は挙動不審になります。彼女にそっぽを向いたままで目が合わせられないし、なにか問いかけられてもブッキラボーにしか応じられません。

青年にそんな態度をとられて、彼女はこう考えました「この人は私には興味ないんだわ」。そして悲しい気持ちになります。彼女は青年のことが好きだったのです。

そしてこの二人は二度とデートをしなくなりました。

青年は考えます「ほらやっぱり。誰も僕のことなんか好きになってくれるわけがない」。

これってどんなことが起きたのでしょうか。二人が付き合えなかったのは誰のせいですか。

 

 

私がムショでこのたとえ話をした後に、男性の受刑者のグループメンバーを見回して、「二人が付き合えなかったのは誰のせいですか」と問いかけると、みんなは口々に「本人のせいです」「自分のせいです」と答えました。

同じ質問をDVの女性を支援する女性たちのグループでしたときには、みんなは顔を見合わせてこう答えました「誰のせいでもないわよねぇ」。

 

この答えの違いについて、ジェンダーによるものなのか、加害者被害者視点によるものなのか、また面白いことにムショの人々はいつも自責的な答えを提示してくる傾向にあることも、それらを考えていくことは興味深いものですが、そのことは本題ではありません。

つまり、誰のせいかといわれれば、私の答えはいつも同じです。

 

親(養育者)のせいです。

 

ですから、親に対して怒りを感じるのは当然です。子どもに適切な養育をしてくれなかった親に対して喪失感を感じ、悲しい気持ちになるのも当然です。また、自分の親に対する恥の感情を持つこともあるでしょう。

でも今、あなたは自分についての考え方や対人関係になんとなく苦痛や不便を感じて、孤独感があっても、それを自分のせい、と思って我慢して日常を過ごしているかもしれません。

 

自分のせいではないですが(親のせいです)、これからの自分についての考え方や対人関係の持ち方などを変えていくのは、「自分の責任」であるとも思っています。

自分の責任とは、この状況を、自分が変えていくことができるってことです。

 

ちょっとやってみたいと思ったでしょうか。

 

●こちらもどうぞ

認知行動療法とはそもそも☞これもまた【認知行動療法】

ムショのグループ☞【シャバ】と【ムショ】のあいだ

 

ではまた来週!

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ピックアップ!複雑性PTSDSTAIR/NST

【2019年最も読まれた記事】第3位 スキルのトレーニング

こんにちは。

飯田橋のカウンセリングオフィス、サードプレイスのナカヤマです。

 

2019年に読まれた記事の中で三番目に多かったのはSTAIRについての記事でした。

【複雑性PTSD】スキルのトレーニング

 

複雑性PTSD、という用語の検索で、『薄味の日記』へたどり着く方も多く、それは自分自身の子ども時代などの虐待の影響について関心を寄せている方が少なからずいるというしるしと考えています。

子ども時代の虐待やネグレクト、マルトリートメントの影響は、複雑性PTSDに限らず、多くの研究で、統合失調症や双極性障害の発症率、アルコールなどの依存問題、自殺率などと関連があることが知られています。また、先月の摂食障害学会では摂食障害とトラウマとの関連も言及されていました。

 

複雑性PTSDの概念は、「症状は子ども時代のトラウマに由来している」というところが、理由を求めたい私たちにぴったりとくるところだと思っています。私たちは何がどうなって今こうあるのか、そうしてこれからどうなるのか、みたいなストーリーをわかっていたい生き物でもあるのです。

そして、逆境にあった子ども時代に、何を学び落としていたのかということも多くの研究の中で明らかになりつつあります。STAIR(認知行動療法で感情調整と対人関係のスキルトレーニングを行うもの)の中で、それらを学び直していくことが、トラウマからの回復に向けた最初の一歩になるでしょう。

 

STAIRはDBT(リネハンによる弁証法的行動療法。境界性人格障害の治療のための心理療法です)の子どもみたいな成り立ちなので、行動すること(スキルトレーニング)を重視しています。実際、どの心理療法でも、先の摂食障害学会で来日されたCBT-E(摂食障害のための認知行動療法)の開発者の一人であるザフラ先生も「行動することのみが認知に変容を及ぼす」と明言していたとおり、考えるだけでは不十分で、行動することが認知の変化を生むと考えています。

 

認知行動療法(C:認知B:行動T:療法の頭文字を取ってCBTと呼んでいます)は

 

 

 

とBマシマシで表記するといいかもしれません。

 

 

 

ではまた来週金曜日に!

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【つり革】事件

こんにちは。

飯田橋のこぢんまりしたカウンセリングオフィス、サードプレイスのナカヤマです。

 

今朝電車に乗っていた時のことです。珍しくラッシュ時の電車の中のつり革につかまって、いつもより早めの仕事に向かっていました。

駅で電車が止まり、ドッと人が乗り込んできたその勢いに押され、私は握っていたつり革を突然手放すような形になりました。私が手放したつり革は弧を描き、そこに眼鏡の男性が押し出されて、その男性の額にコツンと当たりました。

 

男性は顔をしかめ、私は「すいません」と声をかけました。男性は私の方を見ようともせず、顔をしかめたまま、かけていた眼鏡を外し、仔細げに調べはじました。

私は再び「すいません、大丈夫ですか」とささやき声で、でも相手には聞こえるように言ったつもりでしたが、男性はそれには答えず、尚も、ためつすがめつ眼鏡を見ています。

 

うん。レンズに傷はついてないよ。私は目がいいからね、大丈夫大丈夫、傷とかついてないから。

と私は心の中で思いながら男性の様子を見つめます。男性はレンズを食い入るように見ています。

 

だから大丈夫だって。オオゲサだなぁ。

と私は思いましたが、ふと心配にもなりました。

レンズに傷を発見した男性が、私を告発するつもりかもしれないと思ったからです。

 

そんなことになったら、私はうっかり自分の連絡先を教えないようにするんだ。じゃないと揉めた時に困るからね。連絡先教えて下さいって言われたら、私は冷静に、では警察に行きましょうというんだ。あれ、こういう時って警察でよかったんだっけ。鉄道警察みたいなところがあったんだっけ。そこだと痴漢になっちゃうのかな。いや、私は痴漢はしていない。とにかく私は心をしっかり持って、対応するんだ。

と心の中で言い聞かせているうちに、電車はターミナル駅に着き、男性は他の乗客とともに流されて電車を降りていきました。

 

それを見てほっとしながら、降りようとした私の額に、他の乗客が離したつり革がコツンと当たりました。

 

 

 

 

 

 

え。これ、めっちゃ痛いんですけど。

 

今朝の私は共感力というか思いやりのココロがちょっと足りなかったかもしれません。

師走になり、町にも私にもいささか余裕がなくなっている中、また今年も12月の金曜日は2019 年の記事のアクセス数カウントダウンをします。

去年とほぼほぼ一緒なんですが。

でもどうぞ、一年のふりかえりにお付き合い下さい。

 

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