こんにちは。
飯田橋のカウンセリングオフィス、サードプレイスのナカヤマです。
ところで、みなさんは本の読み方を知っていますか。
本棚から一冊本を取り出して、表紙をめくり、最初の文字から順番に読んでいく、アレです。
簡単至極な動作ですが、世の中には本が好きという人と苦手という人に分かれているところからみても、本を読むのに(そして好きだという気持ちを抱くのに)なにがしかの方法とかコツがいるのは想像に難くないでしょう。
私が小学生になり、はじめて挿絵のない「オトナの人が読んでいる本」を読み始めたときに、そのコツを伝授される必要がありました。というのも、本を読むとなると、登場人物の名前を覚えたり、舞台設定を把握するあたりの、はじまりの部分が余りにも退屈で、堪え性のない私は本を読み進めることができなかったからです。
私が本をほっぽり出していると、(暇さえあれば本を読んでいた)父がやってきてこう言いました。
「そりゃあ、本のはじめの部分は面白くないよ」「でもね、そこをじっとガマンしてしばらく読んでいくうちに、そのうちにさ、本当に面白くなっていくものなんだから」。
果たして、父が言った通り、しばらく耐えて読んでみると、その後は自分が読んでいるということを感じないくらい、苦もなく話の中に入っていけることがわかりました。それからの私は毎日、本を読むことに夢中でした。
そして、40年かそこらが経って、あの頃の父の年をはるかに超えるずいぶんな年の大人になった私は、再び本が読めなくなっていました。
その理由はいくつかあるのですが、一つに、本の内容をちゃんと覚えていられなくなったことがあります。私の本棚には自分のお気に入りの本が並んでいるのですが、ある日のこと、その本たちがどんなお話しだったのか、うろ覚えで、ちゃんと思い出せないことに気がついたのです。
そういう日が重なって、私はこんな風に考えるようになりました「本を読んでも無駄だな」と。ちょっぴりココロが折れたのです。
そんな時に「魔女の宅急便」という本を書いた角野栄子さんのお話を聞く機会がありました。
角野さんは84歳ですが、今でも毎日本を読むそうです。
角野さんはこう言いました。「毎日本を読むんですけどね、次の日には内容を忘れちゃっているから、3ページくらい戻って読んで、そうだったそうだったって思い出してまた読むんですよ」。
そして、続けて言いました。「そんな風に読んだ本もね、1年たったころには忘れちゃっているの、全部!」。
私と一緒だ!私はちょっとドキドキして聞いています。角野さんは読んだ本の内容を忘れちゃって、それからどうするのでしょうか。すると、角野さんはこう言いました。
「全部忘れちゃうなんて意味がないと思うでしょ。でもね、忘れちゃったっていいのよ。なんかがきっと自分の中に残っているんだから。目に見えない何かがね」。
そう聞いた時、私はまた久しぶりに本の読み方のコツを教わった気持ちになりました。
白髪のオカッパ頭に黄緑のワンピースを着て、黒地に白の水玉模様の靴下をはいた角野さんは、ちょっと魔女みたいに見えました。オズの魔法使いに出てくる南の魔女です。
そっと角野さんの足元を見てみましたが、今日は銀色の靴は履いていないようでした。
本の読み方のコツでもなんでも、人生っていつでも何かしら新しい発見があって、なんて楽しいことだろう、と思います。
『薄味の日記』もこの記事で100になりました。
自分の人生の中でブログを書くなんて思いもよらなかったし、サードプレイスにいることだって想像もしたことありませんでした。
そういうのも、なんて楽しいことだろう、と思います。
ではまた!
サードプレイス