こんにちは。
飯田橋のカウンセリングオフィス、サードプレイスのナカヤマです。
持続エクスポージャー療法(PE)のセラピストになるための要件の一つに、「スーパーバイザー」からの指導を受けなければならないというものがあります。
そもそも心理臨床の世界では、ひよっこセラピストの、ヨチヨチした臨床を、大御所とはいわないまでも熟練した臨床家であるスーパーバイザーがチェックして指導し、セラピストの成長を促す、という方法が多くとられます。
そのやり方は様々です。治療経過をレポートでまとめたものを見てもらったり、セッションの内容を録音してテープ起こししたもの(これにはすごく勇気がいります。患者さんの重要な話をセラピスト(私です)がとんでもなく間抜け、かつ見当違いに返しているのがしばしば白日の下にさらされる、というようなことが起きるからです)を見てもらったりします。回数も様々で、「事例検討会」のように1回で終わるものもあるし、治療の間、継続的に続くものもあります。
その中でも、PEのスーパーバイズはその方法や回数において、徹底しているといえるでしょう。治療の様子は患者さんの許可を得たうえでビデオに録画され、初回のセッションから最終セッション(セッション10から15くらいになります)まで、毎セッションごと、すべてのセッションについて指導を受けます。
2013年、私のPEのスーパーバイザーはサンディ先生(画像は何となくイメージが被るってことでアデルを使っています。アリアナ・グランデとかティラー・スウィフトとはちょっと違うかなってことです)でした。
サンディ先生とのスーパーバイズはこんな風です。
例えば、火曜日の午後にセッションがあったとします。その時に録画されたビデオは、水曜日に来る素敵な翻訳家の女性、サホちゃん(仮名です)に渡されます。PEは1時間半のセッションですが、それをすべて翻訳するのは時間的にも経済的にも困難ですので、その中でいくつかのシーンを選んで翻訳してもらい、30分くらいになるように編集するのです。
余談ですが、サンディー先生に「例えばどういうシーンを選んで編集すればいいのですか」と聞いたところ(そして内心「先生の指導が必要そうな、私が大失敗している箇所にちがいない」と、院生時代に培われたドМ根性のささやきがあったのですが)、サンディー先生はケロリと「彼女(患者さん)が上手に出来ているところを送って!」と言ってきたのです。先生のお人柄の伝わる一言でした。
そんなこんなで水曜日の朝、私はサホちゃんに翻訳してもらう箇所を伝え、それにしたがってサホちゃんはすごい勢いで翻訳をすすめ、できあがった文章をビデオに貼り付けていきます。
サホちゃんが作業するのは医局という、病院の診察室とは別の事務室のようなところで、いろんな書類やら、ファイルやらが積まれた雑然とした部屋になっています。その頃私の勤めていた病院には、不潔恐怖の患者さんも通院していましたが、この医局の混沌とした様子を見たら、みなさんソッコーで逃げ出すだろうと思われるような場所です。
木曜日には、昨日時間切れのためサホちゃんが貼りつけきれなかった残りの字幕を私が貼って、先生に送る部分のシーンをカットしてつなげる、という編集作業をします。
慣れない作業をこてこてとしていると、同僚の心理士が「今、ナカヤマさんが作業しているその編集ソフト、アルジャジーラ(本社がカタール・ドーハにある衛星テレビ局です)のと同じのみたいですよ!」と教えてくれ、中東のADになったような気持ちも味わえます。
編集が終わったら、セッションのレビュー(ふりかえりや質問など)をこれまたこてこてと英語で書いて、ビデオとレビューをドロップボックスに入れて、先生にメールで知らせます。
そして火曜日の朝、8時にはPCの前に座って、週末にビデオをチェックされた先生とスカイプでお話しているわけです。このルーティンがPEのスーパーバイズを受けている間ずっと続きます。
実際、日常臨床しながらこのような作業は大変でしたが、むしろ楽しくやっていたような気もします。。
サンディ先生は、私に対してはいつも、褒めるときは手放しで、でも助言するときは薄氷の上を慎重に歩くように(多分のその薄氷は私のプライドだったに違いありません)接してくれました。
先生に「グレイト!」とか「スーパー!」と褒められると本当にワクワクした気持ちになりました。そしてワクワクした気持ちになると、今度はこういう風にしてみたらどうかな、という先生からのアドバイスに対しても「やってみる!」みたいな気持ちになったものでした。
惜しむらくは、先生に英語でスーパーバイズしてもらったらさぞかし私の英語の能力も向上するだろうとひそかに期待を寄せていたのですが、優秀な心理士である先生の方が私のへたっぴな英語に慣れて素早く理解するようになってしまったので、私の英語力は1ミリも伸びなかったことぐらいです。
ではまた!
●サンディ先生の上司であるフォア先生の話☞こちら
●フォア先生の話もうひとつ☞こちら
●持続エクスポージャー療法が効いた!という話☞こちら
サードプレイス
35.700725
139.746501