カテゴリー: セルフケア

サードプレイスセルフケア

たぬき分析

こんにちは。

飯田橋のカウンセリングオフィス、サードプレイスのナカヤマです。


先日、精神分析の卒業の日を迎えました。

この1年というもの毎週毎週、分析の先生のクリニックに通っては好きなことをしゃべ散らかして(自由連想法、ともいいます)きました。

先生は話を聞き、ごくたまに、私には考えもつかなかったようなコメントをくれる時もありました。そういうやりとりを通して、私は1年前よりもずっと自分のことが理解できたような気がしています。仕事とはいえ、辛抱強く耳を傾けてくださった先生にはココロから頭が下がります。


最後のセッションでのことです。終了時間の間際、あとは私がお別れの挨拶をするというところで、先生がおっしゃいました。

「ところで、嫌なら断ってくれても構いませんが、今回論文を書くにあたって、症例としてナカヤマさんのお話しの一部を使ってもいいでしょうか」


先生が私を症例として使ってくださるなんて!

私はにっこりしました。とても光栄だと思ったのです。そして、いささかいきおいこんで「もちろんですとも。私がこのセッションで話したことはどんなことでも、ぜーんぶ使って下さったって構いません」と答えました。

すると先生は、慎み深く「いやいや、ほんの一部、ごく一部だけなんです」と微笑んで、こうつけ加えました。


「ほら、あなたがある朝起きたらたぬきがいて怖かった、と話されていたでしょう、あのエピソードです」


私は再びにっこりしました。

時間が来たので、先生にお別れの挨拶をしました。この日のために用意してきた羊羹の包みをお渡しし、丁寧にお辞儀をしてからお部屋を後にしました。


そして帰り道、歩きながら考えました。



たぬきがいてこわかった、なんて、ワタシ言ったかなぁ。




もう一人の私が冷静に言っています。



いやいやいや、言わないでしょ。




更に私は考えます。


たぬきがいるなんて、そんなことってある?


でも、先生の論文は先生の論文なのです。

そして、私のセラピーは私のセラピーなのでした。


たぬきがいてもいなくても、例えツチノコがいたって、私のセラピーは私にとって価値があったのでした。

そのことがわかっているのが嬉しくて、ちょっとだけ(公道にいるものですから)にっこりしました。

ではまた!

サードプレイスセルフケア

お久しぶりです【ドキドキ】

お久しぶりです。

飯田橋のカウンセリングオフィス、サードプレイスのナカヤマです。

えっと、ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、まだ生きています。


この間、父を亡くしたり、仕事の書き物で追い詰められたり、PE(持続エクスポージャー療法、PTSDのための心理療法です)の研修をしたり、なんだか日々忙しく、そんなんであっという間にゴールデンウィークでした。

また実は、このブログで書いたことが、とあるところで引っかかってしまったということがあり、書くのをビビっていた、ということもあります。ニッチな話題故に、グーグル検索で思ったよりも上にきてしまったようです。

気をつけなければ。


そして、精神分析をはじめました。

「冷やし中華はじめました」みたいなノリで書きましたが、私がするのではなく、私が患者さんとなって精神分析をしてもらうのです。

より良いセラピストになるために、更に精進していきたいと思います。


そして、みなさんを万全の体制でお待ちしたいと思っています。

ではまた!

サードプレイス

ストレスセルフケア感情調整

閉ざされていない世界

こんにちは。

すっかり静かになった街、飯田橋にあるカウンセリング・オフィス、サードプレイスのナカヤマです。

 

「お店もなんもみーんな閉まっちゃってるから、仕事もないし、外で散歩するか、家にいて本読んでます」

と、私のMac bookの画面越しにノリコさんは言いました。

 

ノリコさんはフランスに住んでいて、絵を描いたり、モノを作ったりして生活している60代の女性です。毎年夏には日本に帰ってきてサードプレイスに立ち寄られるのですが、今年は帰国を断念し、オンライン・カウンセリングでお話しすることになったのです。

ノリコさんの住んでいるところは、私たちよりも一足早く都市封鎖の憂き目にあっています。

彼女から学べることがきっとあるに違いありません。

 

「散歩と読書は、この時間を過ごすのにいい方法ですね」と私が頷いていると、ノリコさんは、

「朝起きたらまず、ウエストポーチに万歩計を入れるの。私毎日、レッチリのBy The WayのPVに出てくるタクシードライバーみたいな恰好しているんよ」と言って立ち上がり、ポーズを決めました。

見ると、白のタンクトップにヒョウ柄のサルエルパンツみたいなゆるめのズボンをはいて、腰に小ぶりなウエストポーチをつけているノリコさんがいます。

タクシー運転手の標準的な服装というものがあるとしたら、今ノリコさんがしている、ロック・バンドのPVの中のタクシー運転手の恰好は、それから相当かけ離れているものではないでしょうか。

 

「すごい、ですね」と私が、やや言葉を失い気味に、それでもなんとか感想めいたものを押し出すと、それを賛辞と受け取ったのかノリコさんはニッコリして、

「あと、こっちの人らはみんな、カミュの『ペスト』とか読んでるよ。この作品は新型コロナにあえぐ今の状況への警鐘となり得るとか言って」と、教えてくれました。

「日本でも『ペスト』や小松左京の『復活の日』なんかがメディアで話題になっていましたよ。人の考えることは同じですね」と、私が応じると、

「警鐘て」とノリコさんは、眉間にシワよよせて、(ノリコさんなりの)憂いを含んだようなため息をついて、言いました。

「警鐘て、『ジョーズ』の人食いサメを見て、すんごい怖い思いしたからって、ビーチに行く予定をキャンセルするかっていうと、しないじゃろ。ほんで、『13日の金曜日』とかのホラームービーで、イチャイチャしよるカップルがジェイソンに最初に殺されるからって、夜のキャンプ場でのイチャイチャやめるんかっていうと、やっぱりやめられるもんではないです」

いつものノリコさんらしい物言いに、私が思わずハハハと声をあげて笑うと、ノリコさんもウケケケと面白そうに笑いました。

あったかい空気が私たちを包んだように感じました。

 

すると、ノリコさんはちょっと言葉を切って真面目な顔付きになり、こういいました「私、ケッコンすることになりました」。

 

いささか突然の話の展開にたじろいだ私が「え、え、誰と、ですか?」と間の抜けた調子で問うと、ノリコさんはなんだかカタい表情のまま「病院のセンセイをやってる人で、今大変なんですけど、毎日毎日ずーっと飽きもせず私に電話しよるから、PACS(事実婚)してもいいかなって」と答えました。

 

早口で話すノリコさんの言葉の中にある、「センセイ」の最初の「セ」についた、お国言葉のアクセントの響きに、なんとも言えぬ優しさが滲み出ているように感じました。

ようやく事態を飲み込めた私が、居ずまいを正してお祝いを伝えると、ノリコさんはフッと息を吐いて、さっきよりも柔らかい声で「ありがとう」と言い、「なんでも聞いて」と大物芸能人みたいに椅子の背にもたれました。

 

それから、ノリコさんとセンセイとの出会いの場面から親密になるまでの軌跡、ライバルの出現や、プロポーズに至るまでのやりとり、ソウルメイトについて、人生の不思議さについて、つまりは、「恋バナ」満載のセッションを終えると、ノリコさんはキラキラした少女のような笑顔で、画面の向こうからバイバイと手を振ってくれました。

 

今となっては、レッチリのタクシードライバーの格好がとてもイカして見えました。

 

そしてそれは、たとえ不自由な環境の中にいても、人の心は自由でいられると思えた瞬間でもありました。

不安に閉ざされた世界であっても、私たちの心はちゃんと生きて、動いていて、ポジティブな気持ちを表現する力があります。

 

今日も確かに、ノリコさんに学ぶことがあった日でした。

 

 

こちらもどうぞ

●ノリコさんの感情調整☞【感情調整】クリエイティブな気持ちの収め方

●ノリコさんの読書術☞【批判的読書術】

●新しい試み☞【オンライン】カウンセリング

 

ではまた!

サードプレイス

 

 

 

セルフケア対人関係

【安全運転】への具体的な方法

こんにちは。

飯田橋のカウンセリング・オフィス、サードプレイスのナカヤマです。

 

このところ読んでいたのは村上春樹の『ノルウェイの森』と田中康夫の『なんとなくクリスタル』でした。

これには、ある経緯があります。

去年、「是非、コンドームをつけて/つけさせて下さい」と強めに勧めた割には、その具体的な方法を明らかにしていなかったことに対して、不満の声がいくつか寄せられました。特に、コンドームを「つける」ことに関しては自宅学習での達成が可能ですが、「つけさせる」ことは時に至難の技となるのに、その方法をきちんと提示していないのは片手落ちだというのです。

そこで私は、自分の記憶にある中で一番エロチックであろう、そして性的な交渉シーンが具体的に盛り込まれているに違いない文学作品をチョイスして、その中でのコミュニケーションを参考にしようと思ったのです。

念入りに資料(ノルウェイの森となんとなくクリスタルのことです)を確認した結果、主人公たちの複数の性的な行動に関わる詳細は知れたものの、コンドームを「つける」とか「つけさせる」とかのコミュニケーションに関する記述は発見できませんでした。もしこれを文字通り捉えるならば、かの作品の中で主人公たちはコンドームを使ってなかったことになり、性感染症の蔓延と望まぬ妊娠について思いを馳せた私は、しばし気持ちが暗くなりました。

 

しかし、ひょんなことから、そんな私の気持ちを払拭してくれる資料を見つけたのでした。

 

それが、ウキウキセイフティーレンタカー(株)が発行しているお客様対応マニュアルです。

 

マニュアル第3章の「お客様にシートベルト着用をお勧めする」の中の第1項「基本的な関わり方」と第2項「気の進まないお客様にシートベルト着用をスムーズ促す」に続く第3項、「とりわけ嫌がるお客様にシートベルトの着用を上手にお勧めする」には特に秀逸なコミュニケーションスキルが見られたのです。

 

第3項の冒頭では、マニュアル制作者による丁寧な解説がありました。

「ウキウキセーフティレンタカーの社員として、お客様には自社の車を安全に利用してもらいたいと切に願っています。その為にシートベルトの着用は必須ですが、それを嫌がるお客様も少なからずいらっしゃいます。私たちにはお客様と良好な関係を保ちつつ、同時に、シートベルト着用をしっかりお勧めするという高度なスキルが必要なのです」

 

ウキウキセーフティレンタカー社員(以下、ウキウキ)「お客様、この度はご利用誠にありがとうございます。私どももお客様に選んでいただけて大変嬉しく思います。ご利用にあたってはシートベルト着用をよろしくお願いいたします」

お客様(以下、客)「え、俺今までシートベルトつけたことないんだけど。てか、シートベルトしない派だから」

ウキウキ「なるほど、シートベルトしない派、でございましたか。しかし弊社といたしましては安全のためにシートベルト着用をお願いいたします」

 

「今までシートベルトしなくて事故とか起こしたことないもん、俺運転上手だから」

ウキウキ「さようでございますか。もちろん、お客さまの運転は大変信頼しております。見るからにお上手そうです!それでも事故はいつ起きるかわからないものです。どうぞシートベルトは安全のために必要ですので、ぜひおつけ下さい」

 

「でも、シートベルトつけるとドライビング感覚が鈍るから嫌いなんだよなぁ」

ウキウキ「シートベルトに馴染めない感覚をお持ちなのですね。でもそれは最初のうちだけで、だんだん慣れるものですよ。そのうちにシートベルトしてこその安心感がお客様の運転テクニックをより上達させる日が来ると保証いたします」

 

「ま、つけようとしてもつけられるかわからないんだけどね」

ウキウキ「と申しますと」

「俺、人より大きいじゃない?シートベルトの長さが足りないと思うんだよね。せっかくのシートベルトを引きちぎっちゃっても申し訳ないからさ」

ウキウキ「なるほど、確かにお客さまは大きくていらっしゃいますね。大変ご立派です。でも心配無用でございます。弊社のシートベルトはほら、この通り、ボブサップ級の体躯の方でも心地よくフィットできますし、耐久性にも優れています。たとえ、薄さ0.1㎜であっても」

 

「じゃあ、最初はこのまま着けないで走ってみて、途中から着けるっていうのはどうかな」

ウキウキ「お客様、なかなかのアイディアではございますが、やはりシートベルトは最初からお着けいただかないと。途中につけようとしても運転中には上手く着けられないこともございます。それこそ事故のもとですので、どうか最初から、でお願いいたします」

 

マニュアルは、それでもシートベルトをつけようとしない客については「勇気をもってご利用をお断りすることも大切です。ウキウキセーフティレンタカーの社員としての誇りを持って下さい」

と締め括られていました。

 

 

この話しは、もちろん、コンドームをどうつけてもらうかっていう話ですよ。

 

ウキウキセーフティーレンタカーの社員さんのように、相手の言うことに理解を示しつつ、でも自分の要求はしっかり伝えるっていうのを、ぜひやってみて下さい。

 

●コンドームをつけて/つけさせて下さい☞【性欲】!【性欲】??

 

ではまた!

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セルフケア心理療法感情調整

【ポジティブ】シンキング!

ご無沙汰していました。

飯田橋のカウンセリングオフィス、サードプレイスのナカヤマです。

 

認知行動療法の考え方は、自己啓発セミナーなど(心理療法の世界に比べるとキラキラ感が多めの)の世界でも普及しています。

セミナーなどで、よくテーマになるのは

「ポジティブな物の見方をしよう」

ということで、例えばコップに半分程度入った水に対して「まだ半分ある」と考えるのと「もう半分しかない」と考えるのでは、人生の成功具合とか、幸せの引き寄せ具合は違うっていうやつです(そしてこの場合は「まだ半分もある♡」って考えるのが正解ってことらしい)。

でも実は、「まだ半分もある」とスムーズに信じられるのは、元からそう思えている人か暗示にかかりやすい人で、多くの人にとってはなかなかに難しいことなのです。

「そもそも、私はこれまでの人生の全ての事象において、コップに半分しかないっていう風に考えるタイプの人間です」って変に自分の歴史をさかのぼって反省したり、「いくら自分に言い聞かせてもポジティブに考えられるようにならない!」と頭をかきむしる、変に真面目な人もいます。

そこで私は、この手の「ポジティブな見方をしよう」という、もうほとんど呪いに近いこの考え方についての対策を求めて、エライ先生からの助言を仰ぐことにしました。

先生はこの業界(心理療法)のエキスパートを育てている、いわばエキスパート中のエキスパートです。この先生を前にすると私は緊張のあまり妙にヘコへコして、正直のところ面会するのは気がすすまないのですが、背に腹は代えられません。

 

コップに水は半分しかないって考えるタイプの患者さんに対し、どのように認知を再構成していけばいいのでしょうか(質問の仕方も自ずとエキスパート風になります)。

先生はこのように答えました。

「そもそも、コップに水が半分しか入っていないのが問題なのだから、コンビニの近くに引越せばよい」。

え、そういう問題ではなくて。

「では、なにが問題なのかね」。

 

先生とのやり取りは、ものの5分で終了してしまいました。

 

そうして、私は「エライ先生に5分時間を割いてもらった♡」と殊勝に喜ぶかわりに「あのジジィ、5分しかくれなかった!」と憤然として帰ってきたわけです。

腹の虫が収まらないので、食べログのアプリで検索したカフェに向かいました。そのカフェで「スペシャル・パンケーキ、エシレバター付き」を食べました。そして、その足でスパに行き、岩盤浴をしました。足つぼマッサージをうけました。そうしてお湯につかっている間に、だんだんと落ち着いてきて、ゆったりした気分になってきました。

お湯につかりながら思いついたのは、コップに水が半分しか入っていないと、不安を感じて落ち着かないよなぁ、ということでした。

すなわち、私たちの苦悩の元は、考え方ではなくて、感情にあるということです。

ネガティブな気持ちになっている時は、考え方を変えようと躍起になるよりも、その時の感情を手当てしてあげることが肝要なのではないでしょうか。コップの水が少なくて不安になっている時は、自分の気持ちが安心に近づけるようにケアしてあげることが良いのです。私がまさに今、怒りという自分の感情をケアしてるように、です。

そう考えると、コンビニの近くに引越すのはあながち間違いでもありません。

 

エライ先生の態度はちょっとばかし気に入らなかったけど、全くのムダな5分ではなかった、許してやろう、そう考えて、湯上りの身体に心地良い夜風を受けながら帰りました。

 

こちらもどうぞ

●ノリコさんの気持ちの収め方☞【感情調整】クリエイティブな気持ちの収め方

●日常にある認知行動療法☞これもまた【認知行動療法】

●怒りの気持ちの収め方☞【感情調整】怒りそのものなような、そのようにみえるような

 

ではまた!

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