カテゴリー: トラウマ

セルフケアトラウマ呼吸

【リラーックス!】リラックスするのも練習が必要だ

こんにちは。

飯田橋のカウンセリングルーム、サードプレイスのナカヤマです。

試験の前に「リラックスしてね」

プレゼンの前に「リラックスしていきましょう」

歯医者の麻酔の前に「はい、リラックスしてー」

事を構えるにあたって、私たちはどんどん力がはいっていきがちな生き物のようです。

身体が極度に緊張したままだと、頭痛や肩こりの原因になるばかりではありません。

それは気持ちにも影響します。身体が緊張している時は、気持ちにも余裕がなくなるものです。のんきでおだやかな気持ちになっている時の身体は、やっぱりのんきでおだやかそうな様子をしています。

例えば、うつを患っている時、トラウマ症状で苦しんでいる時、睡眠障害で眠れない時など、身体は息が浅く筋肉は固くなって、すなわち緊張してることに気づくかもしれません。

身体が緊張していると気持ちに余裕がなくなるのは先述の通りですから、さあここでリラックスの出番です。

お医者さんからは自律訓練法を、担当の心理士からは漸進的筋弛緩法、そしてヨガの先生からは呼吸法を教えてもらいましたし、また、コーチングのコーチからは瞑想が今ブームです、と言われています。

実際に教えられた通りにやってみましたが、なかなか思うようにいかないし、かえって身体が痛くなったりして疲れてしまいました。リラックスからほど遠い状態です。

このように、多くの人たちがこれらのリラックス法にとりかかって練習してみても、十分な効果が出ないからといって途中でやめてしまいます。

実際はこれらの方法は本当によく効くもので、例えば上手な人が自律訓練法をすると途中で眠りに落ちてしまうほどなのですが、習得するのには継続的な練習が必要です。

最初からリラックスするのが上手な人もいます。これはその人の素質や性格、というより安心でリラックスした環境で育ってきたために、そのような身体の癖が板についている、と考えた方がいいかもしれません。

反対に、リラックスすることが苦手な人の多くは、子どもの頃や大人になってからの比較的長い期間、緊張した環境にさらされています。そういった安全感の薄い状況では、常に気を張って、眠りも浅く、周りの状況の些細な変化に気づきやすいことが、自分を守るために必要なことでした。

このような身体の、いわば戦闘態勢状態の癖を、それと反対の身体の状態:リラックス、にまでもっていくのは、繰り返しの練習が必要だ、ということが想像できますよね。

どんなことでも、新しいことを学んでそれを習得するというのは、とても根気のいる難しいことです。

リラックスの習得もそれと同じことです。

でもある日、ふっと自分の身体から力な抜けるのを感じることができたら、その時はまるで赤ちゃんがはじめて立てた時みたいな誇らしいような気持ちが味わえると思います。

その日を楽しみに練習してみてくださいね。

ではまた!

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トラウマPE心理療法

【PE(持続エクス―ポージャー療法)の効果研究】通常の診察よりも相当効果があるという件について

こんにちは。

飯田橋のカウンセリングルーム、サードプレイスのナカヤマです。

 

以前、大学病院で働いていた時に、比較的大きな治療研究に関わることになりました。

といっても論文を執筆するのは国立の研究所のエライ先生で、私はその頃はじめたばかりのトラウマに焦点化した心理療法=PE、を実施する係員のような役割でした。

 

研究の大雑把なデザインはこうです。

まず大学病院のクリニックに通院中のPTSDの患者さんたちをランダムに二つのグループに分けます。

ひとつはTAUと呼ばれるグループ(TAUはTreatment As Usualの略で、従来通りの投薬と精神科医による精神療法を受ける、ということです)。

もう一つはPEと呼ばれるグループ(PEはProlonged Exposure(持続エクスポージャー療法)の略で、私たちのような訓練をうけたセラピストが担当する心理療法です)。

そのTAUグループとPEグループで、PTSDの改善の経過を3か月、6か月、1年にわたって測定するのです。

結果、TAUグループの症状は変化しなかった(つまり治らなかった)のに比べ、PEグループは大きな症状の改善が見られました。

 

実はTAUを担当していたのは大変に高名な精神科医で、当時、その先生の診察を受けるのに5時間待ちなどというのはざらだったのです。一方、PEを担当していた精神科医や臨床心理士はPEセラピストとしては(私を含め)コワッパセラピストといってもいいようなレベルで、この結果が発表されたときは、「(高名な)先生に勝ったー!やっほーい!」と冗談半分で喜んだものでした。

この結果をふりかえって言えるのは、当時PEを行ったセラピストたちが熟練した治療者ではなかったということで、かえって、このPEという心理療法の構造自体に治療効果があるということが浮き上がったのではないかということです。

つまり症状が改善したのはセラピストのおかげではなく、PEのおかげってことです。

 

この研究から数年たって今は、それをより強く確信しています。

実際、PEは人の自然治癒力について本当によく研究されて出来上がった心理療法です。

そして(誤解を恐れずに言ってしまいますが)、トラウマからの回復において大事なことは、治療者の腕、というよりは人間が生来もつ回復しようとする力が適切に引き出されることです。

 

一方でPEをはじめとしたトラウマ焦点化心理療法はその名前のものものしさもあり、なんだかこわい、と尻込みする人はいます。

でもこの研究の結果を知って、どう思いましたか?

 

PEに関する効果研究は本当にいっぱいあるので、またご紹介できると思います。

ではまた!

 

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トラウマ

【誰がきいたのか?】トラウマ体験の中の孤独感とそこからの解放

こんにちは。

飯田橋のカウンセリングルーム、サードプレイスのナカヤマミチです。

 

セッションの中で体験することです。

何かの本で読んだ一節が、繰り返し思い出されます。

「ある深い森の中で、大きな木が轟音をたてて倒れた。その音を、誰が聞いたのか?」

 

何の本だったっけか、いろいろ探しているうちに、この一節は哲学的な問いの一つであると知りました。

If a tree in a forest and no one is around to hear it, does it make a sound?

見る人(観察者)がいないと、それは存在しないことになる、という現象についての問いかけです(自信はないですが、多分)。

 

トラウマの最中、人は壮絶な孤立無援感を体験します。

それは文字通り密室の中で起きることもあるし、衆人の中で起きることもありますが、当事者は、周りから完全に切り離されていて、しばしば自分自身からも切り離されています。

 

トラウマの話を聞くとき、私の頭の中には「その音―声を誰がきいたのか?」というフレーズが繰り返し繰り返し浮かびます。

そう考えている時の私はすこし無力感めいたものを感じているのでしょう。

そして次に気負いのようなものも感じるのです、その声は確かに今、私が聞いているよ、と。

 

でも、その人が何度も何度も自分のストーリーを語るにつれ、その人も私も確信するようになります。

その声は確かにその人自身によって聞かれたってこと、それは紛れもない事実だってことです。

トラウマの最中、人はひとりぼっちでありながら、同時に自分と一緒にいることもできるのです。それに気づいたときに、自分自身との和解とトラウマからの解放がはじまります。

 

では。

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うつセルフケアトラウマ呼吸

【「自分アプローチ」としてのセルフケア】3つのチャンネルを意識すると上手になります

こんにちは。

飯田橋のカウンセリングルーム、サードプレイスのナカヤマミチです。

今日もまた花粉が飛んでいます・・・。

 

花粉症は、日本では1970年代後半から徐々に増加し、今では国民の4人に1人が花粉症持ち、といわれるまでになりました。

花粉症の症状の緩和のために、早めに薬を飲んでおくことやストレスや疲れをためないようにすること、花粉を衣服や身体につけないように諸々の対策をこうじることが肝要とされています。

つまり、症状の緩和のために、①薬(医学的アプローチ)、②ストレスケア(心理社会学的アプローチ)、③セルフケア(自分アプローチ、と呼びましょうか)という3つの方向からの重複的なアプローチが大切なのです。

 

実は、うつやトラウマ症状などの心や精神的な症状と呼ばれるものも、その緩和や回復への基本的なアプローチは花粉症と同じと考えられています。

服薬、という医学的なアプローチ、悩みを話したり、環境を整えたりする心理社会学的なアプローチの他に、セルフケアという自分アプローチが欠かせないのです。

 

ここでいうセルフケアって例えばこんなことです。

ひとつには、身体に心地良く感じるセルフケアがあります。足湯につかったり、ゆっくりストレッチや呼吸をしたり、温かい飲み物を飲んだりすることです。

また、気分をポジティブにさせる行動があげられます。面白い本(マンガでもいいですよ!)を読んだり、散歩をしてみたり、ちょっと気力のある時はコンサートなどに行ってみたりすることです。

もう一つは、自分のことを落ち込ませている考えや、自分を責めているような考えに気が付いて、それについてもう一度考え直してみることです。そしてできれば、違った視点から自分をみてみることです(この辺の詳しいやり方は認知療法の本なんかにのっています)。

 

このように挙げていくとセルフケアは簡単なようでいて、実践するとなるとなかなか奥が深くて難しいのだなとわかります。

でも(変ないい方に聞こえるかもしれませんが)練習すると上手になるものです。

 

セルフケアしてあげるほど自分のこと好きじゃないとか、自分はセルフケアする価値がない人間だとか、または、どうにも自分が自分を大切にするってことに抵抗を感じる、という人もいます。

その人がそう考えるのも深い理由があるからにちがいありません。

そういう時は、その考えに逆らわない程度にゆっくりと、やれそうな「自分アプローチ」をしてみてください。

 

そうしてセルフケアが上手になると、ちょっと自分のコントロールが上手になったような気持ちになれます。そしてちょっと自信がついた感じが得られるかもしれません。

ちょっとの積み重ねが回復につながるのです。

 

ではまた。

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トラウマPE心理療法

【トラウマ焦点化心理療法】少々ご紹介

こんにちは。

飯田橋のカウンセリングルーム、サードプレイスのナカヤマです。

 

今日はトラウマ焦点化心理療法について少しだけ。

ここでいうトラウマ焦点化心理療法、とは主にPTSDのための比較的構造化された(回数や課題が決まっている)心理療法のことです(例えば学習塾でいえば、通常の授業ではなく、夏期講習のようなものでしょうか・・・)。

ここで「あれ、PTSDとトラウマってどうちがうんだっけ」と思われた方はこちらを参考に。

 

心理療法が効果があるかどうかを調べるには、問題(疾病)に対して手続き(心理療法)を行って、もともとの問題が改善されているかどうかをビフォーアフターで比較します。

様々な心理療法がこのようなやり方で研究がされ、しのぎを削っています。

今のところPTSDに対する心理療法で充分なエビデンスがある、といわれているのは、PE(持続エクスポージャー療法)、CPT(認知処理療法)、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)あたりでしょうか。

子どものための心理療法として、TF-CBT(トラウマフォーカスト認知行動療法)というのもあります。

 

「それで一番効果があるのはどれですか?」

とよく聞かれる質問ですが、研究ではどれも同じくらい充分な効果がでているし、そんなに数は多くはないのですが途中でやめる人(ドロップアウト、といいます)も同じ程度いるのです。

 

実は人がなぜPTSDになるのか、その要因のいくつかはとてもよく解明されています。

●PTSDの二つの要因について知りたい☞こちら

そしてどの治療法(心理療法)もその要因にアプローチしていく、というのは共通しているのですね。ただアプローチの方向というか、順番というか、スタンスが違うだけです。

一方で薬物療法があまり治療成績が良くないのは、症状の緩和のみ(逆に症状の緩和では優れている点があります)で、PTSDを長びかせている要因に対してアプローチできないからと考えられます。

 

もしトラウマ焦点化した心理療法を受けたい、と考えられたら、どの心理療法を選ぶか、というよりも信頼できるセラピストが得意な(練習を積んできている)技法にされるのが一番無理のない方法だと思います。

それに、信頼できる関係というのは、どんな技法よりも治療的なのです。

 

●PEについてもっと☞【PE(持続エクス―ポージャー療法)の効果研究】

●PTSDについてもっと☞【PTSDを長びかせている要因】二つある

●PTSDを長びかせる要因についてもっと☞【PTSDを長びかせる要因】トリッキーかつスニーキーな回避

●CPTについてさらっと☞【CPT 認知処理療法】反対側から?アプローチしても上手くいくらしい

●番外編☞PEが嫌いなヴァン・デア・コーク先生の話

 

ではまた!

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